※7/13/2020に加筆致しました。
6月に入り経済活動の再開も本格化し、各国間の移動制限も緩和が進んでいると報道されていた矢先に、ここアメリカでは2020年6月24日に、ビザ発行停止の更なる延長とビザホルダーへの入国制限が「大統領令」として発令されました。詳しくはアメリカ移民局、大使館、移民弁護士などのウェブサイトに譲りますが、大まかにいうと、
すべてのビザに関しての発行停止を延長、6月24日の時点で米国に滞在していない帯同者含むHビザ、Lビザホルダーに対しての入国制限(制限と言っていますがほぼ禁止に近い)、期間は今年末まで、必要に応じて延長もありうる、というものです。(※大統領例の解釈については今現在諸説あるようです。)
これは・・・何十万人という人々に影響が出る、実に厳しい措置であると思われます。企業に与える損害はともかく、やはりわたしも移民としてアメリカで長年暮らしてきて、ビザ審査やアメリカ入国という「絶対の保証がない」不確実なものに対しての不安や焦りなどを知り尽くしているので、このインパクトに遭遇された方々のことを考えると、大変心が痛みます。
また、わたしが入国や渡航で直面した一番の苦労は2001年9月11日のいわゆる同時多発テロ後のことでしたが、この時は渡航や入国に際して自分がテロリストか否かが問題なのであって、それはどう考えてもどう見てもわたしには当てはまらないし、入国審査官にも敵視されるようなこともないと考えられ、ボディーチェックや持ち込めるものの基準が格段に厳しくなったけれどもたいした話ではなかったと思います。
ただ、今回はアメリカ人の雇用対策、経済政策を前に出したものであるし、この大統領令に賛同するアメリカ人が、心情的に一斉に外国人を敵視する恐れがあります。もちろん、入国管理官を含めてその可能性がありますから、入国できるはずの人でも「心もとない」感情にいとも簡単になるのではないかと思います。
現実に、そんなに小心者でないわたしでも「絶対はない」ので、50回ほどの入国体験があるにも関わらず、時として質問攻めにあう入国審査はやはり気持ちのいいものではありませんでした。それがこのような期間中は、その気持ち悪さが倍増するのは間違いありません。
また、対象外とされる発令時点で米国に滞在しているビザホルダーや、永住権取得者でもやはりいい気持ちがしません。いわゆる雇用対策、経済政策として期間限定とは言えあからさまに外国人を迷惑がっている期間なわけですから、アメリカで働く外国人にとっても心情的に、かなり厳しいものがあります。
いずれにしても、、、少なくとも、、、この大統領令の内容が全員に正しく同じように解釈され、入国審査などで正しく運用されることを願うばかりです。
弁護士事務所のページなどを見ても、見解が分かれるところがあるような、ちょっとしたグレーゾーンも見受けられます。例えば、「現在米国に滞在するH/Lビザホルダーは、一度出国しても問題なくアメリカに再入国できる『はず』だけれども、念のため出国しない方がよいでしょう」などのようなことです。
この大統領令の英語の原文を読みますと、すべての条件は「または」で記述されていると解釈できます。「かつ」ではないのですから、下記の赤文字で示した、6月24日の時点でアメリカ国外にいた外国人(H/L/Jの正規ビザホルダー)も入国規制の対象であると、わたしは解釈しますが、正規のビザを保持していれば6月24日時点でアメリカにいなくても入国できる、と書いてあるサイトも散見されますからここがもっとも要注意なポイントではないかと思います。
まず、入国を制限する対象のビザ種類を記し、
(a) an H-1B or H-2B visa, and any alien accompanying or following to join such alien; (b) a J visa, to the extent the alien is participating in an intern, trainee, teacher, camp counselor, au pair, or summer work travel program, and any alien accompanying or following to join such alien; and (c) an L visa, and any alien accompanying or following to join such alien.
その後のセクションで、対象となる外国人の条件を示し、
(i) is outside the United States on the effective date of this proclamation; (ii) does not have a nonimmigrant visa that is valid on the effective date of this proclamation; and (iii) does not have an official travel document other than a visa (such as a transportation letter, an appropriate boarding foil, or an advance parole document) that is valid on the effective date of this proclamation or issued on any date thereafter that permits him or her to travel to the United States and seek entry or admission.
最後に、例外・除外となる人たちの条件を示しています。(ここでH/L/Jの正規のビザホルダーを除外するとは書いていません。)
(i) any lawful permanent resident of the United States; (ii) any alien who is the spouse or child, as defined in section 101(b)(1) of the INA (8 U.S.C. 1101(b)(1)), of a United States citizen; (iii) any alien seeking to enter the United States to provide temporary labor or services essential to the United States food supply chain; and (iv) any alien whose entry would be in the national interest as determined by the Secretary of State, the Secretary of Homeland Security, or their respective designees.
但し、日本のアメリカ大使館のホームページでは、入国規制の対象外者を下記の黄色下線の様に書いており、最後に詳しくは大統領令そのものを参照ください、と書かれている大統領令そのものと相反しているようにわたしには見えます。これは英語バージョンに切り替えても同じように書かれていることから、解釈がまちまちになっているように思われます。
重要なお知らせ:
6月22日(月)、トランプ大統領は、COVID-19感染拡大収束後の景気回復に向け、米国労働市場にリスクをもたらす可能性のある特定の移民及び非移民の受け入れを一時的に停止する大統領令に署名しました。この発令により、特定の移民の入国を一時停止する大統領令10014が2020年12月31日まで延長されました。この大統領令によって新たに課される制限は、米国東部標準時間6月24日の午前12時1分から有効となり、大統領によって延期されない限り12月31日に失効します。米国市民、米国永住者、またはこの大統領令の発効日に米国内に滞在していた(いる)外国人、有効な非移民ビザまたは移民ビザを保持している外国人は対象外です。<以下、黄色部分の英語版>U.S. citizens, lawful permanent residents, and aliens who are or were inside the United States or those holding valid nonimmigrant or immigrant visas on the effective date are not subject to the proclamation.
この大統領令は次のカテゴリーの非移民の入国を一時的に停止します。:H-1B, H-2B, J (インターン、研修生、教師、キャンプカウンセラー、 オペア、 サマー・ワーク&トラベルプログラム)、Lとその配偶者及び子供。 この大統領令によって、現在有効なビザが取り消されることはありません。大統領令10014及びこの度の宣言では、特定のカテゴリーの移民と非移民に対し、例外が設けられています。大統領令の全文(英語)は、以下のホワイトハウスのウェブサイトにてご確認いただけます。:https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/proclamation-suspending-entry-aliens-present-risk-u-s-labor-market-following-coronavirus-outbreak/
オリジナルの英語を見ると、「or」と入っているので、すなわち、『米国市民、米国永住者、またはこの大統領令の発効日に米国内に滞在していた(いる)外国人、(または)有効な非移民ビザまたは移民ビザを保持している外国人は対象外です。』となり、有効なビザを持っていれば、発効日に米国内に滞在していなくてもよい、と読め、大事なところが不明確になっていると思われます。明確になった時点でさらに加筆させていただきます。
「アメリカ生活番外編」のビザや渡航のところで触れたように、ひとたび入国拒否の憂き目にあうと、一生それが本人について回ります。過去4年間はかなり厳しくなっていてビザ取得時に拒否されたり、入国できずに強制送還されるという、本人にとっては事故のようなケースがうなぎ登りに増えています。そのような話を聞くと、わたしは本当に自分のことのように胸が痛みます。この大統領令により、そのようなことがまた増えないことを切に願っています。
信頼できる移民弁護士によく相談して、くれぐれもお気を付けて。