わたしの講座や記事は基本的にアメリカもしくは英語圏に在住していることを前提に書いています。しかし、英語圏に在住しているとかなり英語がうまくなることはあってもネイティブスピーカーのようにはなかなかなりませんし、母国語の様に英語を使いこなせるかというと、ネイティブスピーカーの中高生くらいのボキャブラリーで、スラングとなると急に分からないなんてことも多いです。
ということで、英語圏に住んでいるということは何かしらフラストレーションやハンデのある状態が普通になってしまうのでそれを受け入れるしかないし、分からない単語やスラングが出てきたら「喜ぶ」くらいの前向きな姿勢が必要になります。そうやって毎日喜んでいると、英語圏に住んでいれば英語はどんどん上達していくのですが、そもそもわたしのように周りにアメリカ人しかいなければ、「日本人から見て英語がペラペラ」でもそれを褒めてくれる人もいません(笑)。
そうです、やっぱり日本にいながら英語がペラペラというのが何といってもカッコいいのです。もちろん、英語関連を生業としているわけではなく、例えば技術者であったり、営業であったり、八百屋であったりするのがクールです。
英語圏に駐在するチャンスが結構あるとはいえ、職業や企業や専門分野によっては、やっぱりそのチャンスが回ってこなかったりすることもあると思います。そういう方にとっても、ひとつのスキルとして「英語がペラペラである」というのは今後大変役に立つことであろうと思います。
白状すれば、わたしがもしアメリカに駐在することがなければおそらく英語を話せるようになりたいとは思わなかったと思います。おそらく学校で10年学習したのに話せないという自分に無意識に呆れていたのでしょうし、当時は英語を使うことすら思ってみたこともないような環境でした。それから20年が経過し日本国内の環境も変わってきています。当時以上に機会が増えた今では「英語ができる」ということは大きなプラスαスキルになります。
そこで、今までの記事とはすこし相反することになるのですが、では日本ではどうやったら英語がペラペラになれるのか?と落ち着いて考えてみることにしました。今までの講座や記事で「英語は勉強するな」と何度も言っているわけですから、それに近い解決方法がないものか?もちろん現在の職業・職務をまっとうしつつ、プラス英語が話せるというのがカッコイイです。
今までも英語を使えるようになるために「目的」が必要と力説しましたから、日本にいてもやはり「目標設定」が必要だと思います。それにより、学習方法も異なるでしょうし、場合によっては「勉強しない」も成立しないかと考えました。わたしも個人的には年間1兆円にもせまる日本の巨大英語産業への抵抗感というか嫌悪感がありますから、なんとかしないとと思っていました。
下記のようなよくある状況と目標設定をまとめてみました。
目標設定 | よくある状況 | 問題点 | |
1 | 英語で外国人とコミュニケーションが取れるようになりたい | 外資系やグローバル企業に勤めていて、社内に日本語を話さない外国人がいる、外国人の来客、海外への出張、外国人とのコンタクトが多い環境 | 目標と環境としては最もよいが、英語に触れる絶対量が足りないので、増やす何かが必要 |
2 | ココ一番、仕事で外国人の来客があった時に英語が話せる人として活躍したい | 外資系などではない企業でココ一番の希少価値が高い 英語圏海外法人の駐在員になりたい 海外出張の機会があるかも | もっとも多いパターンだが、かなり難関であり、英語産業のターゲットになりやすい |
3 | 映画を日本語字幕や吹替えなしで見たい ・英語の小説を読みたい | 映画や小説、文学などやはり翻訳したものではなく原文で読んだりしてみたい人 | これはもっとも容易い。とにかく英語字幕付きの映画を100本見る、小説を100冊読む、もちろん知らない単語などはすべて調べる |
4 | 海外旅行でスムースに英語が使いたい | 新婚旅行ひとつとっても、英語が少々使えなければ結構キツイ・・・ | この低い目標設定のせいでほぼ何もしないし、英語産業の恰好のターゲットになっている |
5 | TOEIC 750点が管理職への昇進の条件のひとつになっている | これは大手企業ではよくある話ですね | この低い目標設定のせいでほぼ何もしないし、英語産業の恰好のターゲットになっている |
上記「3」だけは方法論としては非常にたやすい話で、辞書を片手にそれをやっていれば映画を見れる、小説が読めるように必ずなります。もちろん非常に高い読解力や単語力を必要としますが、続ければ自然に養成されますので、以降「3」を除外した話とします。
英語産業のターゲットになりやすい、というのは、いろんなものに手を出すけども上達せずお金だけ使うような状況です。業界も生徒さんたちが、すぐに英語ができるようになるとうま味がありませんから、いつまでたっても英語が上達せず「末永くお金を使ってくれる生徒」が一番よいのです。中学~高校(~大学)と英語を習ってできるようにならなかったから、「駅前留学」から「一日5分でナントカ」とか「聞き流すだけでナントカ」とかを渡り歩いてくれれば市場規模ももっと大きくなります。
いずれにしてもわたしのように、超ド初心者の時にアメリカ人20人の中に放り込まれるという不運に見舞われていない、幸運に恵まれていないわけですから上達を維持するモチベーションが必要なのは言うまでもありません。
まずは自分が「超ド初心者」であったら、最初はYoutubeで30分くらいの英会話紹介動画などがいいでしょう!挨拶とか基本的なフレーズを色々やってる良い動画はあります。それを見てなんとなく「へーそういう風に言うのか」「へーそんな感じの発音なのか」を一か月くらい毎日2時間見てればいいと思います。なんといってもタダです!ここだけは「聞き流すだけナントカ」に近いかもしれません。まずはちょっと英語に慣れることが大事です。
※一般的に分かりやすいように英語のワン・フレーズに対して、日本語をひとつ訳で付けているものが多いのですが「完全に対ではない」ということは気にしておいて下さい。I don’t care. = 私は気にしません・・・は日本語訳として間違いではないですが、私は気にしませんは、状況によりますがほとんどの場合 、I don’t care.(おれの知ったこっちゃない) では失礼で、I don’t mindが使われます 。
「1」は比較的恵まれた環境ですので、できれば仲のよい外国人の友達をつくると良いですね。英語に触れる絶対量を増やす助けになりますし、なんといっても同業で仕事や会社に関する話題を共有できます。絶対量をさらに増やすためにさらに下記「2」の人のための練習を行なって下さい。
「2」は実は目標としてはかなり高く、それでいて何をしたらいいか分からないという一番多いパターンではないでしょうか。わたしのおすすめは、まず3分間「自己紹介」できるようになることです。仕事についてのことであれば、自分の職歴、職務、具体的な業務内容、この仕事の好きなところ、嫌いなところ、またそれは何故か、5年後、10年後の展望、将来像などを3分ほどで(別に10分でも構いません)英語で言えるようになることです。
あなたは「通訳」になりたいわけではないはずですし、相手の質問になんとかギリギリ答えられれば良いというわけでもありません。こういうことを最終的に「考えながら言える」ということが英語がしゃべれるということです。
「英語」の項で述べていますが、これを日本語でもすぐ言える人はなかなかいないです。しかし超ド初級者でなければ、独学でも真面目にやると1週間くらいで何も見ないで言えるようになっても少しもおかしくありません。たったの1週間でほとんどの日本人ができないことを、「できるようになる」のだったら、試してみる価値があると思いませんか?これができるのとできないのでは、欧米圏では大人と子供くらいの差があります。
もっと極端に言えば、これが「母国語で」出来るか出来ないかが日本人と欧米人の違いであるとも言えます。
別に面接ではないのですから、内容は少々ふざけていても、ウソ・誇張が入っていてもいいのですよ。これは、よくあるビジネス英会話教室の「最初の挨拶」の「次」に出てくる話題です。内容的にも時間が経てば少々変更が必要ですが、似たような仕事をしている限りおおよそ「未来永劫」使えますから絶対に無駄にはなりません。これができるようになったら、どんどん違うことを言いたい、伝えたいと思うようになりますから続けてやっていけばよいのです。自分の趣味について3分語る、週末の出来事について3分語る、なんてこともできるようになっていきます。これが俗にいう「英語が話せる」にもっとも近い状況です。
もっとも、英語圏で英語を使ってまともに仕事をするためには、下記のようなことができることと「英語が話せるということ」で述べました。
- ミーティングで議論ができる (discussion)
- ミーティングでの議事、司会進行ができる (facilitation)
- プレゼンテーションができる (presentation)
- 人前でスピーチができる (public speaking)
目標の「1」も「2」もこのような本来あるべき目標に向かって足を踏み出せれば、意外とすぐに訪れる過渡期です。「人前で3分話すことができるかできないか」は、大人と子供の違いでもあり、欧米人と日本人の大きな違いでもあるのです。
「4」「5」も多いパターンではありますが、目標が低すぎて英語がしゃべれるというレベルにはなりません。ただ目標としてはアリかもしれませんから、それにギリギリ到達しようという取り組み方では一生その通りにならない確率が高いと思います。取り組み方としては「1」「2」「3」の方と同じくして、その過渡期に訪れる地点であると考えた方がよいと思います。
一般的な英語産業の手法も英語に触れる機会を増やすという点で、効果そのものは否定はしませんが、わたしが言いたかったのはそれだけではダメではないかということでした。
もちろん、英語の習得方法は人それぞれでさまざまであります。日本に住み英語を習得したい方々に、私の経験から少しでもお役に立てたらと思い書かせていただきました。