「駐在四方山」から続きとなります。
赴任が決まると、就労ビザの手続きや、社内手続き、転出届など、なんだかんだと3カ月くらいは準備期間がありますが、今回はその会社が費用などの面倒一切をみてくれる一般的な話は割愛し、わたしたちの個人的な事情「どうやって大型犬をアメリカへ連れていくか」だけに絞って書いてます。
分からないことは??
- アメリカでの検疫要求事項で、マイクロチップの埋め込みや狂犬病予防注射の証明書などを英語で書いてくれる獣医さんを探して2回ほど行かなければいけないらしい
- 飛行機に乗せるための、航空法で決められた品質のケージを購入しなければならないらしい。バーニーズは65キロほどあるので、最大クラスのケージ。
- 賃貸マンションなので、赴任日何日か前に荷物をすべてアメリカへ送り出してキレイにした後に、引き払わなくてはいけない。もちろん車も処分しなければならないが・・・
- そのあと、フライト日まで大型犬を連れてどこに泊まるのか?
- そもそも、大型犬を連れてどうやってそのホテルや空港に行くのか?
- 大型犬の国際線の運賃は???以前に猫一匹5万円と聞いたことがあったが3キロの猫に対して、65キロの犬は果たして・・・
- アメリカ到着後、アメリカ国内線には大きすぎて載せられないことが分かり、ハブ空港から7時間ほど車で移動しなければならない
といった疑問がボロボロと出てきます。割愛する一般的な手続きや引っ越し準備もこれはこれで結構大変ですから、それと並行していろいろ手配をしなければなりません。
手提げケージに入るような小型犬や猫でなければ、日本は恐ろしく「ペット・アンフレンドリー」な国です。電車などの公共の交通機関には乗れてもらえないし、成田空港半径50キロ以内に大型犬と一緒に泊まれる宿泊施設は見つかりませんでした(当時)。
上記の疑問点を順を追って解決していきますと・・・
検疫対策は?
検疫対策は問題なくその辺の獣医さんで出来ました。ただ、その獣医さんはアメリカの検疫はよくご存じでしたが、マイクロチップを入れるのは初めて、とのことで「説明書」を読みながら慎重にやっておられました。「検疫」の話しはその後、成田空港とシカゴ空港両方で出てきます。
ケージは?
ケージは最大のものでも、航空法が定める犬の体格に対しての規定では少しウチの犬には小さい・・・ので、JALに問い合わせることに。結論としては、それより大きいものは現存しないので大丈夫とのことでした。その時に恐る恐る犬の運賃を聞いてみたら、購入されるチケットの種類や時期などで変わる可能性があるので、搭乗手続きの時にお尋ね下さい、また事前に予約は必要になります、とのなんとも恐ろしい返事でありました。預入れ荷物と同じ扱いなのは分かりますが、おおよそこれくらいは準備しておいてください、くらいのことを期待していたのですが、それも成田空港まで持ち越しとなりました。しかも後日届いた会社が用意した赴任の移動用のチケットは格安航空券ラウンド・チケットで$700/人 のもので、「戻り分は捨てて下さい」タイプのものです(笑)。これは・・・やられたかな?と感じながら、その次へ。
引っ越し作業を終えて賃貸を引き払い
引っ越しで、主要な荷物はアメリカへ、日本で保存しておきたいものは会社が手配してくれるトランクルームへ、捨てるものは自分で捨てる、と3方向へ送り出さないとなりません。その引っ越しと鍵の引き渡しを不動産屋へ、を終えて、少し余裕を見てフライトの3日前に、晴れて私と妻と大型犬は秋晴れの空の下に放り出されることになりました。
レンタカーとペンション
まずは、引き払う直前に後ろが荷室になっていて、ケージごと犬を載せられる「ハイ・エース」をレンタルしました。神奈川県で借りて、3日間乗り、搭乗前に成田空港支店で乗り捨てる、ということですね。このハイ・エースでなるべく成田空港の近くで、搭乗の日までゆっくりするという目論見でしたが、先述のようにもっとも成田空港に近い大型犬フレンドリーな宿泊施設は、なんと空港から70キロも離れた千葉県の果て、戸別形式になったペンションでした。レンタカーもそうですが、これは予約するときに手が震えてしまうほど高かったです(笑)。
いざ成田空港へ
それでも、まあ日本にいる間の最後の贅沢と思ってそのペンション付近で2日間をゆっくり過ごし、いざフライト日には朝5時ごろには出発し、11時の成田発に対して6時ごろには成田空港にハイ・エースは到着しました。まずは、妻と犬と大方の荷物を空港の出発ロビーで下ろし、わたしはレンタカー屋まで行き返却してシャトルバスで空港へ戻ってきます。
成田空港での検疫準備
空港内では犬はケージから出してはならないので、まずは、犬の体重+ケージで100キロ近くあるものを載せる台車が必要です。それまでに何度も日米を往復しているわたしでも、そのような荷物を平置きに出来る台車をあまり見かけないことに気付いていませんでした。一般的にはスーツケースを縦置きに何段かに入れられる大きな台車は見ますが、その辺をさがしてもなかなかそのような台車がないのです!
犬を海外に連れていく場合は、チェックインカウンターに行くまえに成田空港の7階だったか8階だったかにある検疫所へ連れていき、書類と健康チェックを受けさらに証明書類を発行してもらわなければなりませんから、「押して行く」わけにはいかないくらいの距離があります。仕方なくJALの職員に尋ねると、成田空港職員まで一緒になっての大騒ぎで台車を持ってきてくれるのに、実に1時間半待ちました。
それで持ってきてくれたのはなんと一辺が2メートルはあろうかという、飛行機の周りで使っているような超巨大な業務用。それでも「大は小を兼ねる」と思って、丁寧にお礼を申し上げて一路検疫所へ・・・と思ったら、わたしの考えは間違いで、検疫所へ向かうエレベーターにその台車が入らない!!!のでした。再度、空港職員に相談したら、かなり遠くにある業務用のエレベーターならば乗る、との情報を得ましたが、そのエレベーターは業務用であるし、管轄が成田空港ではない、みたいな話でお客様の使用には「申請」が必要、とのこと。仕方がないのでその申請をしに行くことにして、許可がでるまで実にまたまた1時間半待ちました。
なんだかんだで、結局その検疫所へ到着したのはもう10時を過ぎていたのです。今までの今日のツキ実績からして、この検疫も待ち時間があったり、検査に時間がかかるのではと、もう夫婦してその日の飛行機に乗ることは半ば諦めながら到着。すると、待ち時間があるどころか、非常にスムースになんの支障もなく検疫が終わり、「乗れるかも?」と、その大きな台車を押して取って返してチェックインカウンターへ着いたのが10時40分ごろ。11時の出発に対しもう搭乗は始まっています。
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なんと、今チェックして見ると多くのメーカーのXXLサイズのケージにはキャスターが付いている!!!!!その分、わたしが買った時よりもいくぶん高いような気がしますが、キャスターさえ付いていれば・・・この3時間の苦労はせずに済んだはずでした。
チェックインカウンターへ ‐ 犬の運賃支払い ‐ 搭乗
獣医からもらった睡眠薬を挟んだパンを犬に食べさせ、スーツケース二つと一緒にカウンターで預けると、その時すっかり忘れていた犬の運賃を請求され・・・
「500ドルとなります。」
「は?(安い!聞き間違いか?)」
「500ドルです。クレジットカードでお支払いになりますか?」
「はい!お願いします!」
ということで、3キロの猫でも65キロの犬でも500ドルだったというオチはこの日の朗報でした(笑)。もちろん、これは18年前の話しですから、今現在はどうなのかは分かりません。
犬としばしの別れを告げ、夫婦で走って、セキュリティー、出国検査を通り抜け、飛行機に乗り込み、座席に座ったと思ったら扉がバタンとしまり飛行機が動き出しました。飛行機が動き出した瞬間、確かにわたしたちの犬が吠える声が聞こえました。
わたしたちの朝の6時間の激闘がようやく終わり、エコノミーだろうがなんだろうが、この「乗れた」達成感は仕事でも経験したことのないようなものでした。妻は単にわたしの段取りが悪いと思っていただけかもしれませんが・・・・
アメリカへ到着
アメリカへ到着し、はじめての就労ビザでの入国は問題なく終わり、荷物と犬との対面を待ちます。犬は係員が台車に乗せてわたしたちのところまで連れてきてくれました!なんとスムース!これがまたピッタリフィットの台車で必要なところまで持って行っていいとのことでなんて親切。
アメリカでの検疫?
しかも、検疫っていっても「検疫」の方に進み、ケージに貼ってある書類をチラッと見ただけで・・・「行ってよし」!なんとなんの書類を受け取るでもなく、書きこむでもなく、本当に何もなし!!! 晴れて、みんなでアメリカの地を踏むことができました。拍子抜けする簡単さ。あとで聞いたところによると、アメリカの「犬」「猫」の入国は書類審査のみで揃っていればパス、その代わり、犬猫以外の動物はめちゃくちゃ厳しいとのこと。
犬はまだ睡眠薬が効いているのか、眠れなかったのか分かりませんが目がやや虚ろでヨロヨロしているのが分かり心配しました。ケージの中で寝転んでこれるんだから、エコノミー・シートよりいいんのではと妻を安心させるようなことも言っていましたが、犬は初めて飼い主から離れて、あと何時間でつくなどが分からない中で空調の効いた荷室にいるのだからものすごいストレスなんだと思います。
アメリカでのレンタカー ~ 到着まで
ここから車で7時間かかる赴任先まで行くのに、またもレンタカーを予約していました。こんどはハイエースに似たようなミニバン「アストロ」です。わたしだけでシャトルバスに乗って、そのアストロを借りに行きます。またも一泊乗り捨て料金にしているものだから結構高い($350くらいだったかな?)のですがこれもしょうがないと思っていたところ、車を借りてさあ空港に戻ろうと思ってふと後ろを見たら・・・乗用車版のアストロ・バンは貨物系のハイエースみたいなのと異なり、3列シートの7人乗り仕様であることに気付き、これではケージが乗らない!!!受付に戻り、一番後ろのシートを外したいと頼んだら、他支店への乗り捨てなのでそれは出来ないと言われちょっと困ってしまいましたが、「あと200ドル払うけどどう?」の一言で店長と相談してくれて解決しました(笑)。
こういうのも交渉次第という、赴任初日からアメリカらしいことを経験しました。違う人だったら違うことになります。会社のことなんか何も考えずに「オッケー」と言ってくれる人から、いくらお金を積んでも「できません」の人までいると思います。
唯一、この赴任道中でよかったのは、赴任前から何度も出張しているところだったので事前にアパートを借りておけたこと。その日、運転して帰っていける家がすでにあるのは、またホテル暮らしになるよりはとても安心感がありました。もちろん、家財等々はまだ到着しておらず不自由な暮らしは始まりますが、広いアパートにまずは落ち着ける、というところでわたしたちのアメリカ生活がはじまりました。
まとめ・・・
というわけで、この「犬」に関する部分だけわたしの個人の事情ということで前述したように、日本円にして40万円ほど使ったのですが、アメリカの一般常識ではこれは企業が負担すべきものと「アメリカ人全員」から言われました。わたしのアメリカ人の上司はドイツに赴任した時に犬を二頭連れて行ったけど会社が全部面倒を見てくれたと。そうは言っても、日本の規則がそんなに簡単に変わるはずもなく・・・しょうがない部分ですね。日本の場合は、そんなことを認めたら、芋づる式にいろんな人がいろんなことを言ってくる恐れがあるので「平等に」支度金などの一定額(単身や家族帯同のカテゴリーによって異なる)が決まっているということなのです。
この日米で違う「平等論」は今後も、駐在期間中結構わたしを楽しませてくれました。まだまだ駐在員四方山話はたくさんありますのでお楽しみに!