はじめに
まず、最初にお断りしておきます。立場上、米国で働く日本人を見る目が実に厳しい私は、もしかしたら関わりあいたくないタイプの人間かもしれません。しかし、実はアメリカ人は口には出さなくとも、同じかそれ以上に厳しい目を持っています。欧米流に慣れている米国人から見て、日本流のビジネススタンダードはやはりかなり特殊であると言えます。本書の主旨は、仕事やアメリカ生活を、有意義で充実したものにする「秘策」をお伝えすることです。わかりやすいように、解説などにやや極端な表現を使用しているため、私の提言や表現を不快に思う方もいらっしゃるでしょう。しかし私は決して、日本人や日本文化に嫌悪感を抱いているわけではありません。詳細は後述しますが、着任直後からのジレンマと決別した今となっては、むしろ以前より、日本で生まれ育ったことを誇りに思っているほどです。そういった経験があったからこそ、欧米を始めとする世界のビジネスシーンで活躍できる日本人の「同志」の育成に、少しでも貢献できればとの思いから、筆を執ることとなりました。私が長年疑問に感じていたことも含め、読んでいただいた方に「生きた情報」としてお伝えできるよう、なるべく分かり易い極端な表現を使っているとご理解いただければ幸いです。
アメリカでプロとして活躍するためには、幾らかの「トレーニング」と「変身」が必要です。日本人ビジネスマン固有の特徴を把握した上で、長所を活かしつつ短所を補うことが重要です。どんなことでも、最初からうまくできる人はいません。できないことを認めて取り組むか、諦めてやりすごすか、できないと認めないか。たった三つの選択肢です。本当に残念なことに、日本人の多くが後者の二つに偏っています。慣れ親しんだ環境とは全く異なる文化や風習の中へ飛び込んでいくのですから、困難が数多くあるのは当然です。それをひとつひとつクリアするために、どのようなトレーニングをすれば良いかを、本書ではなるべく詳しく説明していきたいと思います。
最近では、アメリカでの経験を活かし、見違える様になって日本へ帰任されていった方も多くいます。私自身もそうでしたが、特に「英語を駆使できるようになったことが世界観や行動範囲を大きく変えた」といった感想を、よく耳にします。残念ながらその反面、自分の本当の能力を発揮出来ずに赴任期間を終える方々も見てきました。「不安だが大丈夫そうだ、何とかなっているだろう」「ここでは仕事で充実感を得られない」「アメリカの人や文化、英語など、全てが嫌いになってしまった」。日本では堂々としていて誰からも尊敬されていたはずの人が、赴任先では実力をなかなか発揮できない。私の周囲にも、こんなはずではなかったと苦しんでいる人が少なくありませんでした。長い人生のうち、たった数年の駐在期間をどう過ごすか。それを「飛躍」への足がかりとできるか否かは、いったいどこで決まってしまうのでしょうか。
米国での駐在を開始し、引越しや銀行口座の開設、社会保障番号(SSN)や運転免許の取得などが終わり一息つき、本格的に業務を始めたすぐに下記のような悩みを必ず持つはずです。
- 英語が苦手で、内心どうにかしたい、どうにかしなければ、と思っている
- アメリカ人の部下や上司、同僚と効率的に仕事を進め成果を高めたい
- どうしても仕事が優先で英語を勉強する時間が取れない
これらは後述するように普通の日本人ならば当たり前のことです。もしひとつも該当しないというならば、あなたは帰国子女や赴任経験者で欧米文化に相当慣れているか、特に高い仕事の成果を望んでいないか、望まれていないか、のどれかでしょう。
また、どれかがあなたに当てはまるならば、この先を読み進めていただくとどのようにすれば良いのか理解し、分岐点を正しい方向に進むことができ、毎日のように向上が感じられて悩みがほどけていくと思います。
本書は欧米で「成果を残す」ためにやるべきことを書いています。そのためには、たとえ卓越した専門技術や知識を持っていたとしても、欧米では何ができないのかを理解し、それを克服していくことが重要です。優れた日本人の特徴を欧米文化の中で生かせれば、大きな実績と達成感をもってご帰任されるのはもう約束されたようなものです。
日本人の特性を認識する
世界中のどこに住んでいても、長い間そこで生活をしていると誰しもそこの文化がスタンダードと思うようになってしまいます。日本は先進国のひとつと呼ばれて久しいのですから、日本文化がグローバルスタンダードに近いだろうと日本人が思っても何も不思議ではありません。日本企業の多くも欧米化が進んでいる近年、もうほぼグローバルスタンダードに沿っているはずだという理解も完全に間違いとは言えないと思います。始めに申し上げた通り1990年代から確実に日本企業は海外へ進出しなければなりませんでしたので、その道を進み始めているのは間違いありません。
私は、昭和生まれの昭和育ち、古き良き時代、古き悪しき時代の出身です。平成~令和と日本も変わってきており、若者のグローバル化も進んで英語教育、グローバルビジネス教育なども昔に比べるとずいぶん進んでいると良く耳にします。そのようなジェネレーションによる違いは僅かに感じるものの、70歳くらいのいわゆる団塊の世代から、20台前半の新卒間もない若者世代まで、全労働人口層とアメリカで一緒に仕事をさせて頂きました。ジェネレーションは変われども日本人の特徴・・・もちろん例外もありますから多くの方々のということで・・・というものをアメリカ人との比較の中でつぶさに観察することが出来たと思います。日本にいる時は日本人を意識することはほとんどなく、下記のこともまったく知りませんでした。
日本は世界地図では東方の端に位置する島国の単一民族国家、単一文化国家で、日本人は日本文化を異文化と比較する機会が日常的にありませんので、自己認識、自己分析をすることが無く、その結果、他民族や他文化に慣れるのが間違いなくとても難しいのです。欧米文化に慣れないのは当たり前のことなのです。本当の意味でのグローバリゼーションがどういうものか、またその重要性を理解するのはとても難しいのです。それほど日本の文化は特別にユニークである事を認識して頂きたいと思います。
日本人の長所は短所
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米国人の特性を認識する 短所が長所
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日本人の典型的な姿
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何のために駐在しているのか
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性格と仕事
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