なぜアメリカ人はフレンドリーなのか

ビジネス
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「グローバル・ビジネス」の項で、アメリカ人の短所は長所と述べました。単に日本人との違いを強調する意味で、アメリカ人はもちろんバリエーションが大きいもののこういういいところがある、とかいつまんで書きました。

ビジネスという環境の中であまり重要でないと思い、その中で取り上げなかったことにアメリカ人の「フレンドリーさ」があります。これは日本人に対してだけということではなく、アメリカ人同士でも何でも基本的には非常にフレンドリーな人たちであります。それと比較すると、わたしから見ても日本人はとてもアンフレンドリーです(笑)。「フレンドリー(友好的)」=「親切」ではないものの、親切心をとってもアメリカ人の方が平均的に高いと感じられます。

多くのひとが、タイトルの「なぜアメリカ人はフレンドリーなのか」という問いに「国民性?」と簡単な答えを出すと思います。間違いではないと思いますし、諸説あるのですが、わたしの観察によると、これは「教育された道徳、礼節、誠意によるもの」と考えています。「本音と建前を使い分ける」とか「おもてうらがある」と悪く言うこともできますが、ビジネスシーンではビジネスマナーという道徳や礼儀を守るということを優先しているのだと思います。

そのような意味で他の項を書き進めていく中で、この「フレンドリー」という形容も欧米ビジネスの大事な部分だと気付きました。わたしは恥ずかしながらその「ビジネス」の中で、その道徳や礼節に対して「サービス精神」というチープかつ日本語的にはやや上から目線の言葉を使い、さらには「日本人もアメリカに来たならば、つべこべ言わずに仕事なんだからやるのです」などと乱暴なことを書いていました(笑)。少し訂正が必要です。質問の裏を返せば「なぜ日本人はアンフレンドリーなのか」であり、その答えは「道徳心や礼節、誠意が欠けているから」ということになります。

プレゼンテーションやスピーチをやや苦手にしていた私が薦められてデール・カーネギーのEffective Speaking講座に二度ほど行ったことも書きました。その講座の実際の卒業試験は自分のビジネスに関連することのスピーチ、ではありましたが、その他の題材は、単にその場にいる同じ受講者や、講師に対して自分の経験を面白おかしく話をするというだけのものです。

二日目に「スピーチや会話の心構え」として、D・カーネギー氏の著書をテキストに講座があり、その日本語版があることも分かったので下記に目次だけご紹介します。

■第1章:勇気と自信を養う
■第2章:自信は周到な準備から
■第3章:有名演説家はどのように準備したか
■第4章:記憶力を増進する
■第5章:スピーチの成功に欠かせないもの
■第6章:上手な話し方の秘訣
■第7章:話し手の態度と人柄
■第8章:スピーチの始め方
■第9章:スピーチの終わり方
■第10章:わかりやすく話すには
■第11章:聴衆に興味を起こさせる方法
■第12章:言葉づかいを改善する

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感想(16件)

ぱっと見て、ビジネス戦略やスピーチ技法のように見えますが、D・カーネギー氏の他の著書にもある「人からの好かれ方」も主旨は似たようなもので、上記はややスピーチに焦点を絞った内容、後者は「人に好かれなければ何事も成功しない」ことが論点であるようです。

実はわたしは最初は本当に「そんなことくらい分かってるよ」というふうな感じで聞いていたと思います。なぜなら多くのまわりのアメリカ人もよく同じことを言っていたから、そんなに目新しい理論とかテクニックではないだろう感じたからでした。とにかくアメリカ人は「道徳じみた」ことをすぐ言う人たちだから「聞いたことがある」と思い、心の中で少しバカにしていたのかもしれません。宗教的な道徳心も高く、The Golden Rules のひとつ “Treat others how you want to be treated.” (自分がそうして欲しいように、人に接しなさい)などは恐らく30回くらい聞いたことがあります。論語にも、己れの欲せざるところ、人に施するなかれ、と似たようなものがありますね。

そういう言葉が誰からも口をついて出てくる、というところがその高い道徳心と礼節を感じます。だからアメリカ人にとって、初対面の相手でもフレンドリーに接するのは「礼儀」なのです。

このD・カーネギーという人はもう65年前に亡くなった方で、この世に多数のベストセラーを生んで、多くの政治家や実業家などの著名人がその著書をバイブルだと言っている有名な人です。(その受講時は恥ずかしながら、わたしはまったく知らなかったのですが・・・)つまり、このような人との接し方のバイブルのようなもので、アメリカ人は子供のころから礼儀と節度と道徳を教育されていて、人と会話をするときや、人前でスピーチするときにはサービス精神があるのが当たり前なんですね。Effective Speakingというのは、その誠意や熱意を具体的にどうやって表現して、あなたの話しを最大限好意的・友好的に聞いてもらうか、という講習なのです。最大限友好的に話す、ということが最大限友好的に聞いてもらう唯一の方法であるということです。

わたしの参加したカーネギー講座は講師によるマンツーマン実践も含めたそのトップ・エンドとも言えるものでしたが、アメリカ人は似たようなことを小学生のころからやっています。もうお察しの通り、『「分かっている」と「出来る」は違う』ということです。上記カーネギー著の目次の要点を言えというと、「出来る」人たちは、たいていの人が言えますから驚きです。常日頃から気を付けて実践していることの表れですね。

わたしも含めた日本人の特に理系のエンジニアという職種がもっとも苦手とする部分で、そのような意味で「変身」が必要と言っているのは間違いないではないと思います。

日本も礼節を重んじる伝統・文化であると考えられています。ただ、その礼節が目上の人や権力者、お客様にだけ使う文化になってはいないかと勘ぐるのはわたしだけでしょうか。悪いことに、目上や権力者や客の立場になった時に、目を、耳を疑うような振る舞いをするので、昨今パワハラ、カスハラ、セクハラのような事件が明るみになってきているのだと思います。そのようなメンタリティーのまま欧米に来ると恐らく大変なトラブルになると思いますから是非お気を付けください。

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